翻訳の仕事は在宅で働くこともできるため、専業主婦の方やフリーランスで働きたい方などに人気の職業ですね。
英語が得意な方や仕事で英語を使っている方は自分のスキルを使えますし、勉強したり仕事をすればするほど翻訳のスキルが自分に蓄積していくのも魅力的です。
わたしは、海外貿易事務→英語講師→海外業務という仕事を経て、やっと大好きな翻訳の仕事に従事できるようになりました。実際に翻訳に従事するようになりましたが、わたしもまだまだ翻訳の勉強の途上です。
翻訳の勉強は独学で本を読んだり通信で勉強してきたのですが、その間、翻訳の勉強だけをしていたわけではありません。
通訳ガイドになる勉強をして挫折したり、ちょっとだけ通訳学校に行ったりと、いろいろな英語の勉強をしてきて少しずつ英語力が上がっていったかな、と思います。
翻訳の仕事をするためにはどの位の英語力が必要?
翻訳の仕事を志望している方にとって、翻訳の仕事をするために必要な英語力がどの位なのかは非常に関心があることだと思います。
この記事では、「どの位の英語力があれば翻訳者として仕事がもらえるのか」、「どの位の英語力があれば翻訳者としてやっていけるのか」について、わたしの経験を踏まえてご説明します。
翻訳者になるために必要な英語力とは?分野の知識がある場合はTOEIC700点、ない人はできれば800点以上
最初に結論から言うと、翻訳したい分野の知識がある人はTOEIC700点位でもOK。翻訳したい分野の知識がない場合はできればTOEIC800点以上の英語力があると安心です。
なぜ翻訳したい分野の知識がある人はTOEIC700点でも大丈夫なのか?
それは、いままで翻訳の発注側も体験し、様々な翻訳の仕事をしてきた経験からすると、翻訳者として一番強いのはその分野の知識がある人だと痛感しているからです!
ときどき「TOEICの点は600点くらいの英語力でも翻訳はできる」、という意見を耳にすることがあります。わたしは「600点だとちょっと厳しいのではないかな?」と思います(もちろん、専門知識がある場合はこの限りではありません)。
なぜかというと、簡単な文章であれば特に問題がないかも知れませんが、色々な構文が入り組んでいる文章になると、文法的にどのような構造になっているのかを把握することが必要になってくるからです。
文章の構造を理解できていない状態で英語の文章を訳したとして、日本語訳がいかに素晴らしくても、元の文章の意味と合っていなければ翻訳とはいえないですよね。
特許や契約書など、技術系の実務翻訳の文章は複雑な文章である場合が多く、出版翻訳とはまた違った意味で和訳するのは大変です。
文法の構造がしっかりと取れないとこんなことになりかねません。
- 書いてある原文の意味がいくら読んでも分からない
- 英語の原文を単語のレベルで訳したものの実際の原文の意図するところと違っており、自分なりの解釈になってしまっている
- 英語の原文とは逆の意味になっている
- 原文が分からず訳しているので訳した日本語の意味が不明
こんなこと、ありますよね。
そして、このことを痛感するのは、あまり詳しくない専門分野の文章を翻訳するときです。
自分がわかる分野の翻訳であれば原文の構造がちゃんとわかっていなくてもなんとなく訳してしまえるかもしれません。
でも、詳しくない分野であるときちんと訳出ができず「普通の論理からいったらこの内容だろう」と推測して違う内容になってしまうことがあり得るのです。
翻訳は特定の分野の知識があると非常に有利
エンジニアなどの工学系の技術的なバックグラウンドがある人や医療系、理数系の学部を卒業したり仕事をしている人は翻訳をするのにはかなり有利だと思います。特に和訳であれば英語力が多少低めでも十分にできると思います。
というのも、背景知識が分かっていれば、難しい英語でもだいたい何が書いてあるかを自分の経験や知識を基に理解することができてしまうからです。
わたしの現在の勤務先は部品メーカーで加工や組み立ても行っています。加工や組み立てと言っても簡単なものではなく、それぞれの会社の機密情報であるような複雑な工程や加工方法をたくさん経て1つの製品が作り出されています。
そのような工程や加工方法は、実際に基礎知識があって自分が工場で見ていたり体験していたりしなければ、英語の文面をいくら見ても分からないのが現状です。
原文の意味がわからないときに、英語が苦手なエンジニアの人に「…のようなことを書いてあるみたいなんですが、意味が全然わからなくて…」と聞くと、「あ~それは…という意味だよ!」と即回答してくれる、ということが何回もありました。
技術的な内容なので、その日本語の説明を聞いてもまだよくわからないのですが(笑)。
このため、技術的なバックグラウンドがあり、翻訳がしたいけれど英語力にちょっと自信がないのでどうしようと思っているラッキーなあなた!ほんとうにうらやましいです!
悩まずに、この記事を読んだ後にすぐに翻訳の勉強に取り組むことをおススメします。
というのも、専門分野の知識を付けるのと英語力を付けるのであれば、英語力の方が断然早く身に付きますし、産業翻訳であれば専門分野の知識があるのとないのとではスタート地点で雲泥の差があるからです。
専門分野の知識がない場合は英語力をできる限り伸ばしたい!
でも文系でも大丈夫!実務翻訳の場合でも、文系出身者も数多く活躍されています。
技術的な知識がない文系出身はその分を英語力でカバーしたり、技術的な知識を補足的に勉強したり、検索力をつけたりすることで翻訳を行うことができます。
特に文系だと英語力だけでなく日本語力が高い場合が多く、読みやすい日本語にすることができますし、和訳でなく英訳のときなどは有利になります。
TOEICの点を上げる必要は特にない
上記の内容が、翻訳したい分野の知識がある人はTOEIC700点位でもOK。翻訳したい分野の知識がない人は少なくともTOEIC800点以上の英語力が必要だと言った理由です。
実際に文系でTOEIC800点でも翻訳の仕事をしている方もいらっしゃいます。
なお、ここではTOEICの点数を目安として挙げましたが、TOEICの点は翻訳の能力には関係ないので、TOEICを受けなければならないということではなく、TOEICの点数を上げるための勉強をすすめている訳ではまったくありません!
あくまでもどの位の英語力があるかの目安としてこの位の点数の文法力と読解力が必要だという意味でTOEICの点数を挙げているだけです。
慌ててTOEICの試験勉強を始めたりしないでくださいね!
背景知識のない場合はTOEICは800点以上、とお伝えしたので、「背景知識もないし700点しかないからだめなんだ…」とがっかりした方もいらっしゃるかも知れません。
もしTOEICのリスニングが苦手で総合力で一定の点数は取れないものの、Readingは得意で読解力はある、という方ならもちろん大丈夫です。
TOEICはリスニングの能力も点数の対象になるため、文法と読解はとても得意だけれどリスニングがまったくダメで点数が上がらない、という方はTOEICの点数のことは気にしないでください。通訳と違って翻訳ではリスニングは必要ありませんのでリスニングを勉強する必要もありません。
専門分野もないしReadingも文法も苦手だけれど翻訳がしたい」という方は、きっと本が好きで文章を読むのが好きだったり日本語力が高かったりする方ではないかと思います。
その場合はコツコツと勉強すればきっと道は開けますので、先を見越して翻訳してみたい専門分野の知識も含めて勉強しておくとよいと思います。
翻訳の基礎的な勉強をするための記事も併せて読んでみてくださいね。
TOEICで点が取れない場合は他の試験で英語力をアピール
先ほどTOEICは受けなくてもいいと書きましたが、履歴書欄に記入する際には、社内翻訳であってもフリーランスであっても何らかの英語力を示す必要があります。
特にその分野のバックグラウンドがない文系出身の場合は、翻訳会社側も英語力しかその人の能力を判断する術がありません。
ですが、TOEICを教えていたわたしの経験上、リスニングは一番点数を上げるのに時間がかかる分野ですので、履歴書に記入するためだけにTOEICの勉強をするのは少し遠回りかな、と思います。
このため、リスニングが苦手なためTOEICで点が取れない方で翻訳の仕事がしたい方は、無理にリスニングの勉強をするのではなく、例えば工業英検や実務翻訳検定などの勉強に注力して、一定の級を取得することで履歴書にアピールするのも手だと思います。
まとめ
この記事では、「翻訳をするためにはどの位の英語力が必要なのか」ということについて、わたしの経験を踏まえてお伝えしました。
翻訳したい分野の知識がある人はTOEIC700点位でも翻訳はできるかも知れませんが、翻訳したい分野の知識がない人は少なくともTOEIC800点以上くらいの英語力が必要。英語力は高ければ高いほど良い、ということが分かっていただけたのではないかと思います。
英語の勉強に加えて少しずつでも自分のやりたい分野の専門知識を増やしていくと翻訳をするときに必ず役立ちますよ!
わたしの略歴と持っている資格
- 社内翻訳の仕事をしています。翻訳歴は約15年です。
- 工業・技術の文書、仕様書、規格、メール、契約書などを英語⇔日本語に翻訳しています。
- 以前は英語学校で講師としてTOEFLなどを教えていました。
- 持っている資格はTOEIC990点・英検1級・全国通訳案内士です。
- 大学は英語学専攻で、「定冠詞・冠詞」について卒論を書きました。
翻訳者が愛用する辞書「英辞郎」の詳しいレビューはこちらをどうぞ
翻訳者としては英訳した英文の文法やスペルミスがないかどうかチェックすることは重要です。英文チェックに欠かせないおすすめのサイトをご紹介しています。