こんにちは。ミッキーです!
在宅や社内翻訳も含めて約15年間、色々な翻訳の仕事をしています。
パソコンやタブレットさえあれば、会社にいなくてもどこにいてもできるのが、翻訳の仕事の魅力の一つです。
翻訳者というと専門職なので、翻訳者になるには専門の学校に長年通って勉強しないといけない感じがしますよね。
でも学校に通わなくても独学で翻訳家になる方法はあります!
現にわたしは専門学校に行ったことはなく、翻訳の勉強は独学で本を読んだり通信で勉強しました。
翻訳者になるためには英語の能力、日本語の能力、翻訳の技術、専門分野の知識、検索の能力、この5つすべてが必要になってきます。
英語と日本語のスキルアップについては以下の記事に詳しく書いていますので、併せて読んでみてくださいね。
この記事では、独学で翻訳者になるためにどうやって翻訳の技術を身につければいいか、わたしの経験を踏まえてお伝えします!
翻訳者になるために独学で【翻訳の技術】を勉強する方法とは?
「翻訳するためには言語感覚が優れていなければならず、翻訳のスキルは弟子が師匠の技を盗むように翻訳をしながら身に徐々に着けていくもの!」
「ええっ?」これを聞いたら自分には到底ムリだと思ってしまいますよね。
実際、昔は翻訳技術は体系化されておらず、翻訳学校で先生に教えてもらわないと習得できない技術だったようです。
でも、今は便利な時代。翻訳のテクニックを学習するための色々な本やツールを活用することができます。
翻訳のスキルは英語の文章を大量に読むだけでも日本語の文章を読むだけでも身につきません。
英語と日本語の対訳のある文章を使って、実際に英語を翻訳してみて自分の訳文と対訳の日本語を比較し、何が間違っていたのか、どうしたらより良い訳文になるのか、を確認することが重要になってきます。
翻訳を独学で勉強するためのおすすめの方法は、大きく分けて2つあります。
- 本で学習する方法
- 英日の対訳のある英語サイトを活用する方法
独学で一番おすすめなのは本で学習する方法です。
実際にわたしが学習してきておすすめできる本を、厳選してご紹介します。
翻訳のスキルを習得するために絶対におすすめの本【厳選4冊】
翻訳の布石と定石 実務翻訳プロへの道 (サン・フレア アカデミー学院長 岡田 信弘 著)
この本は、産業翻訳(実務翻訳)を独学で勉強するのであれば必読書です。
心の底からおすすめできる一冊です!
英語の文章の文法がきちんと理解できていて語彙も正しくわかっていれば、正確に直訳を行うことができます。
この本では、このような正確な直訳→自然な日本語に変換するための方法(本の中では「定型的操作」という言葉が使われています)を学習します。
実際に技術分野で翻訳を依頼されるような文章が例文として取り上げられています。
訳出の例と訳出方法が丁寧に紹介されており、すぐに実際に活用できる翻訳の技術が満載です。
わたしが「こんな文章を以前に仕事で訳したときに苦労して大変だった…」というような文章がいっぱい載っていて、読んだときはもっと早く読んでいれば良かったと後悔しました。
本の内容は5つの構成になっています。
第1章では、英語の名詞形をうまく訳すとわかりやすい訳文が作れるため、名詞構文を中心として、無生物主語、名詞・動名詞・形容詞構文の訳し方、畳み込み文を展開する方法を学びます。
第2章では、名詞構文と同様に重要な受け身と訳順の選択に関して学習します。能動・受動の訳し方の変換方法、to不定詞とso that構文で訳し下げるか訳し上げるか、また関係節の訳し方についても詳しく解説されています。
第3章では、知らないと大きな誤訳をしてしまうのに忘れている人が多い重要構文、そして接続詞に関する解釈を教えてくれます。
さらに第4章では、原文通りに訳しても自然な訳文にならなかった場合にどのように処理すればよいか、を学習します。
第5章では、訳出した文章をさらに手入れして、自然で読みやすい日本語に変換する方法が解説されています。
具体的に1つ例を挙げてみます。
第1章の畳込み文の展開については以下のように解説されています。
動詞派生名詞などによる畳込み構文を主語とし、他動詞を述語とする文は、文章をコンパクトにするために英文で多用されています。これを畳込み分と呼ぶことにしますが、翻訳に工夫を要するものです。
一般的に言うと、後半の主語の部分を、従属接続詞で始まり派生名詞の動詞形を述語とする副詞節として訳し、後半は元の目的語を主語とする受身形または自動詞形にします。
「すると」で訳す
たいていの場合は「~すると、~が~される」とすることができます。この場合はwhenを使って書き換えたことになります。例文1C-1
Combining bleach and ammonia generates a toxic chloramine gas.※①漂白剤とアンモニアを一緒にすることが、有毒なクロラミン・ガスを発生させる。
△②漂白剤とアンモニアを一緒にすることにより、有毒なクロラミン・ガスが発生する。
③漂白剤とアンモニアを一緒にすると、有毒なクロラミン・ガスが発生する。訳文①はいかにも直訳調で、受け入れられません。②のように受身形に変えると、より自然な訳文が得られます。態を変えるとき、元の主語に付く助詞、目的語の助詞、動詞の語尾の3か所が変わることに注意してください。しかし、③のようにwhenがあるつもりで訳すと、多くの場合、文脈の流れがより明確になります。
引用元:2018年 三省堂 岡田信弘『翻訳の布石と定石』P.43
これ一つとっても勉強になりますが、他にも「なるほど!」と勉強になる訳出パターンが数多く載っています。
これらのパターンを覚えておくと色々な場面で活用できること間違いなしです。
「英文翻訳術」安西徹雄 (著)
英語のスキルをアップするための単語と文法、そして読解力の勉強方法のところでも触れた、翻訳者のバイブルと言われている本です。
翻訳のノウハウを翻訳の志望者に伝える適当なシステムがなく、それまで経験とカンに頼っていた現状をシステム化したい。
本書は、著者の安西先生が、翻訳者を志望している人に翻訳のテクニックをなんとか体系化して伝えようと書かれた本です。
英文法の枠組みを利用して翻訳の技術を説明する試みとして執筆された翻訳学習の名著であり、「文系・理系を問わず翻訳を目指す人であれば必読の本」だと言われています。
所有格、無生物主語、関係代名詞などの様々な文法の項目と大切なポイントを含む44つの項目について安西先生のノウハウが惜しみなく披露されています。
特に勉強になるのはこの点です。
- 実際の生徒さんのあまり良くない翻訳例
- 良い翻訳例に対するコメントと著者の試訳
わたしも実際に問題の試訳をしてみましたが、良くない翻訳例とされているような内容で訳してしまうことがあり、「がーん」と落ち込んだりしました。
でも、次は間違えないようにしようと気持ちを切り替えました。
通学の学校で先生に指摘してもらうのではなく、独学なのに自分の間違いや下手な訳に気付くことができるのはありがたいことです。
こんなに濃い内容なのになんと968円!コスパ抜群の文庫本です。
何回も読んで学習すると自然で読みやすい訳文が出てくるようになりますのでとてもおススメです。
英日日英 プロが教える基礎からの翻訳スキル 田辺希久子 (著), 光藤京子 (著)
「英日日英 プロが教える基礎からの翻訳スキル」は、翻訳に興味があってフリーで翻訳の仕事をしようとしている人、社内の業務で翻訳に取り組もうとしている人向けの本です。
翻訳者としてはやってはいけないミスや間違いやすい点を集中的に勉強することで、 翻訳の技術の習得に要する時間を短縮できる、というコンセプトで書かれています。
入門編、基礎編、実践編がありますが、それぞれ英日翻訳と日英翻訳の項目に分れています。
英日編では英文の読解力の強化と訳出のスキルを身につける勉強、日英編では、基礎的な文法力の強化と訳出のスキルを身につける勉強をします。
英日だけでなく日英の翻訳スキルも強化できるのがおすすめポイントです。
入門編では、翻訳に役立つツールと方法として、専門用語の検索方法や単語用語集をどのように作成すればよいか、などが解説されています。
基礎編では、先ほどお伝えした「翻訳の布石と定石 実務翻訳プロへの道」、「英文翻訳術」と同様に、単語の解釈、品詞の転換方法、分詞構文や関係詞構文、順送りなどについて細かく分かりやすく学習できます。
基礎編の日英翻訳では、わたしの苦手な定冠詞・不定冠詞の使い分け、前置詞の勉強方法も教えてくれます。
例えば校正する前の翻訳の原稿には必要のないところに”the”がついていることが多いということで、どのような場合に必要になるかという基本的なコンセプトを教えてくれます。
それぞれの項目の最後に練習問題がありますので復習もできますよ。
実践編では、実際の新聞記事、ウェブサイト、電子ジャーナル、専門誌などを使いながらそれぞれのポイントと試訳が書かれています。
わたしは断捨離の一環でよく読む本をBOOKSCANに送って電子化してもらったことがあります。この本も紙の本しかないのですが、電子化してBOOKSCANのアプリですき間時間に読んだりしています。
BOOKSCANはこんな感じでKindleのように本棚にいれてスマホやタブレットで読めるので、とても便利です。
誤訳辞典 別宮 貞徳 (著)
この本では、50種類以上の色々な分野の原書や訳書の中から約1500の誤訳の例を抽出し、その中から厳選した361例を掲載。
文法編、常識・背景知識編、珍訳編、単語編、と分かれています。
例えば、文法編では、「文法知識の不足、読解力の欠如によっておこる誤訳」について解説。常識・背景知識編では「異文化を知らないでおこる誤訳」を説明しています。
例えば、以下のような例が載っています。
【原文】Climate does change, rapidly and significantly enough to alter the productivity of the land.
【誤訳-47】気候とは変動するものであり、気候が変動すれば土地の生産性は急速に、しかも大幅に変わってしまう。
【試訳】気候は、土地の生産性に変化を及ぼすほど急激かつ大幅に変わるものである。
この【誤訳】の重大な誤りは、enoughよりもむしろrapidly and significantlyのかかり方にある。
引用元:1990年 バベルプレス 別宮貞徳『誤訳辞典』P.32
「異文化を知らないでおこる誤訳」の部分は主に出版翻訳の分野を勉強される方には必読です。
また、珍訳編では、「思わず吹き出す迷翻訳」というのも載っています。
目次とindexを辞書として活用することもできます。様々な誤訳の原因やパターンを知ることができるため勉強になること間違いなしです。
翻訳のスキルを習得するためにおすすめの英日の対訳のある英語サイト
次に、英日の対訳のあるおすすめの英語サイトをご紹介します。
ニュースで学ぶ現代英語
「ニュースで学ぶ現代英語」は、ラジオ第2で毎週月~金曜 午前9:30~9:45で放送している番組です。
最新の英語ニュースを聞きながら、世界で実際に使われている英語を勉強できます。CEFRはB2~C1レベルとのことです。
この番組のいいところは、耳で聞くだけでなく、ニュースのスクリプトを英語と日本語の両方で表示してくれることです。
動画と和文や解説などは放送後に公開されます。過去のスクリプトも読めるので安心です!
1つの記事は短めですので、時間がなくても「必ず毎日1つの記事を勉強する」と目標を決めて取り組むのもいいと思います。
料金:無料
POLYGLOTS(ポリグロッツ)
POLYGLOTSは英語学習プラットフォームで、ニュースの総合サイトであり学習サイトでもあります。
リーディング力の向上、単語学習にも使用することができますが、さらに翻訳の技術力を上げるために使用することもできて便利なアプリです。
PCではなくスマホのアプリを使用します。
日本語訳のある記事がたくさんあり、それぞれの記事が長めで、自分で翻訳した訳と比較して学習して翻訳のスキルアップが図れます。
文法、リーディング、リスニングと1つのアプリでさまざまな勉強を楽しみながらできるのでぜひ使ってみてください。
基本機能は無料でも使用できますが、リスニング機能のついたBasicプランであれば480円/月で使用することができます。
480円であればワンコインなので、スタバのカフェラテを月1回我慢するだけでその分で勉強できますね!
料金:無料(有料コースあり)
日経LissN
最後になりましたが、個人的に1番気に入っている、アプリで勉強するツールをご紹介します。
LissNは日経の提供です。国際情勢や経済動向、企業戦略、テクノロジー、ライフスタイルなど、日本経済新聞やNikkei Asian Reviewのニュースが学習できるアプリです。
勉強といってもシンプルで、日経がセレクトした注目ニュースが1日5本英日で毎日配信されてそれを勉強する、という方式です。
基本の機能はリスニングなのですが、英語と日本語とが完全な対訳になっているので翻訳の練習にもとても便利です。
先ほどのPOLYGLOTSはエンタメ系の記事も多く、それはそれで読んでいて楽しいのですが、LissNは特にビジネスに特化しているので、産業翻訳の勉強にとても便利です。
このように1パラグラフずつ対訳になっているので、スキマ時間に少しづつ練習することもできますね。
最初の月は無料で試してみることができます。社会人の英語の勉強にもうってつけです。
また、登録しないでもサンプル記事を試してみることはできるので一度使ってみてはいかがでしょうか。
こんな感じでそれぞれの記事の単語を保存しておいて単語を覚えることもできます。
ベーシックプラン:1か月600円
アンリミテッドプラン:1か月980円
ベーシックとアンリミテッドの違いは、ベーシックプランでは過去1か月の記事のみを読むことができますが、アンリミテッドではすべての記事を読むことができることです。
わたしの場合は過去1か月で十分なので600円のベーシックプランにしています。
デメリットとしては、なぜかiPhone、iPadだけの提供で、アンドロイドでは残念ながら使うことができないようです。
iPadで使ってみましたが、画面のサイズが合っていないのと向きが変えられないのでタブレット使いもおすすめしません。
また、米・英・豪・加などのネイティブスピーカーが記事を読み上げてくれているらしいのですが、なんだかAIっぽい。なんででしょう…私だけこう思うのか、機械音声っぽいんですよね。
まあ、このようなマイナス点を考慮した上でもとにかくとてもおすすめです。ぜひ使ってみてくださいね。
まとめ
この記事では、独学で翻訳の技術を身につけるために、わたしが勉強してきた本や教材をご紹介しました。
翻訳のスキルを向上させるには、やはり自分の訳と対訳の訳とを見比べて、自分の訳の問題点を是正していく方法が一番です。
いろいろ勉強することがあって時間もかかりますし大変ですが、お互い少しづつ勉強して良い翻訳者を目指していきたいですね!
わたしの略歴と持っている資格
- 社内翻訳の仕事をしています。翻訳歴は約15年です。
- 工業・技術の文書、仕様書、規格、メール、契約書などを英語⇔日本語に翻訳しています。
- 以前は英語学校で講師としてTOEFLなどを教えていました。
- 持っている資格はTOEIC990点・英検1級・全国通訳案内士です。
- 大学は英語学専攻で、「定冠詞・冠詞」について卒論を書きました。
英文のレベルを上げるなら、英語の校正ツール「Grammarly」で自分の間違いを確認するのがおすすめです。
翻訳者としては英訳した英文の文法やスペルミスがないかどうかチェックすることは重要です。英文チェックに欠かせないおすすめのサイトをご紹介しています。
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